ばらの花とポールスミスローズ

『ばらの花』を中学の校内放送で聞いて、誰のなんという曲かと思っていたとき、カーラジオでたまたま再会し、DJの言ったバンド名とタイトルを必死で覚え、TSUTAYAに駆け込んでレンタルしたのが、くるりの最初の思い出だ。

高校のとき、学級文庫になぜか女性向けハウツー系文庫が混じっていて、他の本はだいたい読んだので暇潰しに借りていたところ、髪型やファッションで似合うものを見つけるためにはどうすればいいかみたいな話で、ガリ勉の自分にはまったく新鮮で非常におもしろく、結局最後まで読んだ。

印象的なエピソードに、香水の選び方の項目で、非常に地味でまじめな見た目の女性とエレベータに乗り合った時、ばらの花束のような美しい香りがして、この人はこんな香水をまとうおしゃれをしているのか!とギャップを素敵に思った、というようなものがあった。ちょっといいな、と内心思った。


犬が好きだからかどうかは知らないが、いい香りのするものは昔から好きだ。ただ、教育方針の厳しい家庭に育ち、勉強ばかりでファッションやコスメに疎く、自分がそういうものに触れるのはふさわしくないという気持ちが強くて、高校卒業まではとくに香りものを買ったり楽しんだりの経験はない。市内唯一のアロマテラピー専門店に通いつめ、なけなしの小遣いでアロマオイルを買うのがたまの楽しみという程度。もちろんローズオイルは非常に高価なので、おれに手の出るものではなかった。

大学進学で地元を離れ、さらに就職でなんの縁もない関西に引越してしばらく、さて香水に挑戦してみようかという気になった。23歳くらいの頃か。三宮駅の北側、飲み屋街の縁に林立するドラッグストアでブランド香水がいくつも安く売られていたので、これなら自分でも気軽に香りを試して買えそうな気がした。しばらく香りを試したり、売ってる品物をネットで検索したりして悩んだあげく、初めて買った「ちゃんとした香水」がポールスミス ローズだった。

セレス-ポールスミス ローズ

Paul Smith Rose EDT

トップ: ローズ、グリーンティー、スミレ
ミドル: ローズ、マグノリア
ラスト: ムスク、シダー

かなりさっぱりしたばらの香り。トップにグリーンティーとあるが、緑茶というかローズの青っぽさ、グリーンっぽい要素があるということだろう。他の花については正直よくわからないが、さわやかで軽いとにかく使いやすいローズ。かといってありがちなシャンプーっぽい感じでもないし、当時は3000円くらいでわりとどこでも買え、年ごとにナンバリングのアレンジ版も出ていて、今思えば香水入門としてめちゃくちゃいい一本だ。

ボトルも潔いデザインなのが、当時の甘いファッションを苦手な自分の気に入った。銀色のそっけないキャップに首の細いフラスコみたいなシンプルな透明のガラスボトル。そのシンプルな中に、薄いピンクのさわやかなばらの香水。当時は知人もなく、仕事もわからないことばかりでだいぶくたびれていたが、これをつけていると少し元気が出たように思う。


今はもう廃盤というか、ポールスミス自体フレグランス部門が見当たらないので、フルボトルで買うには通販サイトのストックを見るしかなさそうだ。ただ、今は記憶の中の思い出のポールスミスローズがあればいい気がして、取り寄せる気持ちにはならない。23歳の自分に戻ったって別にしゃあないしな。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です